1私だけ?人に相談しにくいお尻の汗

汗の悩みとして見落としがちなのが、お尻やふとももの汗です。
お尻やふとももは、顔や手のひら・足汗や頭部、脇などのメジャーな箇所と比べ、汗の量も少なく、普段はあまり意識しない部分だけに、特別な対策をなにもしていないという方も少なくないことでしょう。それだけに、ドキッとした経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

お尻やふとももからの汗の量が多い方の中には、アウターの色が変わるほどの汗の量に、あらぬ誤解を受けるのではないかと悩まれている方もいらっしゃいます。

そこまで深刻でないにしても、生足で過ごす時間が多い夏は汗の悩みが増えます。
例えば、パイプ椅子など、座る部分がビニール製の椅子に座ったとき、太ももと椅子が張り付いているような気持ち悪さを感じた、長時間自転車をこいだ後に、汗でアウターが濡れてしまった、立ち上がったときに目に見えて椅子に汗がついていたなど・・・。

お尻や太ももの汗は、立っているときは問題がなくても、長時間座った姿勢を取ることで目立つことがあります。お尻やふとももの汗が気になっていると友人や恋人宅でソファーを勧められても、ちゅうちょしてしまうことや落ち着かないことが多くなってしまいます。

人に言いづらいお尻や太ももの汗は場所が場所だけに、友人同士の話題にあげることも出来ず、なかなか有効な解決策を見つけられずにいるという方もいらっしゃるでしょう。

お尻は脇や手、足などと比べると、汗腺の量も少なく、脇や手のひら、足のうらなどと比較すると汗の量は少ない傾向があります。お尻やふとももなどの下半身に汗をかく原因は、遺伝的なものや、ストレスや緊張など精神的なもの、病気やホルモンバランスの崩れなどがあります。中でも、特に多いのが精神的な原因によるものです。

お尻の汗の原因や対策法を知って、いざというときも困らないようにしましょう。

2クーラーがお尻の汗を増やす理由

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汗の最大の役割は体温調節です。つまり、体温が上昇すれば汗をかき、汗が蒸発するときの気化熱により、体内の熱を逃がして体温を下げます。そのため、季節や、屋内・屋外など条件によって汗の量は変わります。

しかし、場合によっては、この汗を出すための汗腺が働きを弱めてしまうことがあります。
その原因がクーラーによる身体の冷えです。本来、自律神経が全身の温度管理をして、暑いときには汗をかいて体温を調節するはずが、クーラーにあたりすぎることによって、汗腺の働きが弱まり汗を出さなくなってしまいます。

すると、汗腺は汗を出す必要がなくなるため、どんどん働きが悪くなってしまいます。
しかもクーラーの風は、上半身にふれることが多いので、下半身よりも上半身の汗腺の働きが悪くなっているケースがあります。

この場合身体の中では、上半身で汗を出せない分の体温調整を下半身で行おうとする傾向があります。働きの良い汗腺から汗を出そうとするのです。よって、下半身の汗が増えるという事につながってしまうのです。

2多汗症の見分け方と、
お尻に汗をかく病気

お尻やふとももの汗の多い方の中には、自分自身のことを汗かきであると思っているかたもいらっしゃるかもしれません。しかし、特にクーラーによくあたっているわけでなく、冷え性でもないのにお尻の汗が多いときには、多汗症である可能性が考えられます。

多汗症と汗かきはどちらも多く汗をかくことに違いがないことから、同じように思われがちです。しかし多汗症とただの汗かきは異なります。多汗症は本来であれば汗をかくような状況でないときに大量の汗をかいてしまう病気です。

通常であれば、私達の身体は運動をしたときや、気温が上昇して暑さを感じたときに、体温調節のために汗をかきます。しかし多汗症の場合は、適温で快適な状態であっても汗をかいてしまいます。

多汗症の症状は大きく分けると2つに分けることが出来ます。全身性多汗症と局所性多汗症です。全身性多汗症は全身から大量の汗が出る症状であり、局所性多汗症は特定の部位からの汗が増える症状です。

多汗症の約9割は、局所性多汗症であり、全身から汗をかくのではなく、お尻や背中、顔や手、足の裏など、局所的に汗をかくという特徴があります。

多汗症かどうかは、汗をかくべき状態で汗が出てくるか、もしくは汗をかくべき状態でないときに汗をかくのかどうかで判断されます。しかし、多汗症であるかどうかという判断は素人には非常に難しいです。自身が多汗症でないか、気になる場合には専門医に相談されることをオススメします。

この他にも病気が原因でお尻に汗をかきやすくなってしまうことがあります。バセドウ病、白血病、結核、更年期障害、自律神経失調症、糖尿病性神経障害などにより汗をかきやすくなる場合があります。

臀部の汗が多い場合でも、病気でないこともあります。遺伝的な要因の可能性もあります。お尻の汗腺の発達が遺伝的に多い場合、必然的に汗が増えます。

もし、お尻の汗が気になる、急にお尻の汗が増えたなど、心配な場合には自己判断をせずに必ず専門医を受診してください。

4緊張がお尻の汗を増やす?
自律神経と汗の関係性

暑くないときでも、緊張したり、不安なことがあったりするときにお尻に汗をかいてしまう場合があります。この原因は、自律神経の乱れにあります。

無意識のうちに体から分泌される汗は、自律神経の働きによりコントロールされています。自律神経は、一定の体温を保ったり、血圧を維持したり、心臓を動かすなど、さまざまな体の機能を自動的に調整しています。

自律神経には、体を緊張させたり、精神活動を活発にさせる機能がある交感神経と、体をリラックスしてくつろがせるための副交感神経があります。交感神経と副交感神経がそれぞれバランスよく働くことで人間の身体は健康な状態に保たれています。

汗腺には交感神経があり、お尻の汗も交感神経が関係しています。
この交感神経は、緊張しているときや強いストレスを感じたときに活発になります。そのため、緊張すると交感神経が優位になり、発汗をうながすのです。

汗には、体温を調整するための温熱性発汗と、緊張したり驚いたりしたときに流れる精神性発汗があります。お尻やふとももなど身体の局部のみ汗が出る局所性多汗症の場合には精神性発汗が大きく関係しています。

ストレスにさらされ続けると、自律神経は本来のバランスを崩してしまい、常に交感神経が優位な状態になってしまいます。そうすると、ちょっとした緊張やストレスですぐに汗が出てくるようになってしまうのです。

5毎日の生活を見なおして
お尻の汗を減らす方法

臀部の発汗の原因によっては生活習慣を見直すことで、お尻やふとももからの汗の量を抑えることが可能です。お尻に汗をかかないようにするためには、自律神経のバランスを整えることが重要です。ストレスと自律神経の働きには相関関係があるといわれていますので、まず、ストレスを溜めすぎないように心がけることです。

現代はストレス社会と言われているので、ストレスを感じないことは非常に難しいかもしれません。ですので、ストレスを感じたら、積極的にストレスを解消するようにしなければなりません。

ストレスには様々な要因があるように、ストレスの解消方法も人によって異なります。たとえばプライベートの時間を充実させたり、何か好きなことをやったりすることで解消される人もいますし、ゆっくり1人で過ごすことで解消される人もいます。

また、悩みや不安などについて、人に話を聞いてもらうことで気持ちが軽くなるものです。ストレスをゼロにするは簡単にはできないかもしれませんが、工夫することで心にかかる負担を軽減することができます。

自分はどんなことをしたら(もしくは、しなかったら)ストレスが解消されるのかを知って、自分で自分の身体と精神をいたわってあげることが大切です。

ストレスを減らすことを意識して生活することで、自然と自律神経のバランスも整い、かかなくても良い場面での汗が減ります。

6お尻や太ももの汗、シーン別対策法

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お尻や太ももの汗で一番辛いのは「周囲からの誤解」です。場所が場所だけに、大量に汗をかいて洋服を濡らしてしまった場合などは、「もしかしたらおもらし?」とよからぬ誤解を招いてしまうことがあります。

そのため、しっかり対策を取りたいところです。

いくつかのパターンに分け、対処方法をご紹介します。


ビジネスシーン
ビジネスシーンでは、プレッシャーのかかる場面も多く、なかなか状況をコントロールすることが難しくなります。精神的な問題が原因でお尻やふとももなどから多量の汗が流れ出るようでしたら対策を取る必要があります。汗をかいてしまうことは仕方ないとして、「汗をかいた場合にも見た目上はわからない」工夫が役立ちます。具体的には、汗取インナーの着用いただくと効果的です。そのうえで下着の中には汗パンツやズボン、スカートの下に1枚穿いておくだけで、汗じみの心配が軽減されます。また、下半身は特にガードル等で下着が蒸れてしまう原因となる場合もありますので、通気性のよい下着やガードルを選ぶことがポイントです。

運動をするとき
運動後は全身の汗腺からくまなく汗がでます。お尻やふとともに限らず運動後の汗が気になる場合には、ウェアの素材と色にこだわって選んでください。速乾性の機能素材を使ったウェアなら、汗をかいてもすぐに乾きます。また、白や黒など汗の目立たない色を選ぶことでより一層汗じみが気にならなくなります。

自転車に乗るとき
普段下半身の汗が気にならない方でも、自転車に乗ったあとの汗が気になるという方もいると思います。自転車をこぐと、お尻がぐっしょり濡れてしまい、降りるときになんだか恥ずかしい思いを経験したことがある方もいるでしょう。自転車に乗るとお尻に汗をかくという場合には、インナーに気を配るほかに、サドルを見直してみるのはいかがでしょうか?ビニール素材のサドルを避け、穴の空いた通気性の良いサドルを選ぶことで汗と蒸れを軽減することが出来ます。

7お尻の汗を放っておくと

お尻は、常に下着が密着している状態にあり、座る場合には椅子などで圧迫されることが多いことから、身体の中でも湿度が高くなりがちになる部位です。お尻の汗を放っておき、そのままにしておくことで、汗が外に排出されずこもった状態になります。蒸れはかぶれの原因となります。また汗の量が増えるということで、汗腺などがつまりやすくなります。汗腺につまった汗は皮膚を刺激し、かゆみや吹き出物となります。

8お尻の汗への対策方法とは

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お尻に汗をかいた場合の対処法としては、一番に蒸らさないことです。化学繊維を使用した下着は蒸れやすいので、木綿など出来るだけ風通しのよい素材の下着を選ぶことをおすすめいたします。また汗などにより敏感になった患部をこすらないように、できるだけゆったりとしたデザインのインナーを選んでください。

汗によりお尻がかぶれたり、かゆみが出た際には、掻いたりこすったりすることで、悪化してしまう場合があります。早期改善を目指すことが大切です。

9ふとももの汗にも注意!

見落としがちなふとももですが、ふとももは、身体の中でも皮膚が厚く、皮脂や汗の分泌が多いという特徴があります。お尻と同様に汗がたまりやすく、蒸れやすい部位になりますので注意が必要です。

11ズボンやスカートに
汗のニオイやしみを残さない!

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ズボンやスカートに汗のニオイを残さないために、制汗デオドラント剤で汗を抑えましょう。制汗デオドラント剤で汗を抑えることで、ズボンやスカートにつく汗が減らすことが出来ます。また制汗デオドラント剤を使うことで汗のニオイも軽減されます。

汗がついてしまったら、そのままにせずにすぐに洗濯するようにしましょう。ズボンやスカートはドライクリーニング指定の素材も多いかと思います。その場合は、クリーニングに出した方が良いのですが、ひとつ注意が必要です。

通常のドライクリーニングでは水洗いをしないので、汗の汚れは落ちません。ただドライクリーニングをお願いするのではなく、クリーニング店の方に汗をかいた旨を伝えれば、汗汚れも落とせるコースでクリーニングをしてくれますので、伝えることをお忘れなく。

お尻やふとももは、日中衣類に覆われているため、汗のケアをこまめに行うことが難しい部位です。脇や手足に比べ見落としがちな箇所となりますので、おでかけの前には特に念入りに対策を行っていきましょう。

  • 五味常明ドクター 写真

    PROFILE

    監修者:医学博士 
    五味常明先生

    昭和大学形成外科等で形成外科学、および多摩病院精神科等で精神医学を専攻。患者の心のケアを基本にしながら外科的手法を組み合わせる「心療外科」を新しい医学分野として提唱。ワキガ・体臭・多汗治療の現場で実践。わきがの治療法として、患者が手術結果を確認できる「直視下剥離法(五味法)」を確立。TVや雑誌でも活躍中。流通経済大学スポーツ健康学部、客員教授。