緊張と発汗の関係を知れば、もう焦らないでOK

COLUMN / VOL.6

緊張というと、どんな状態を思い浮かべますか?
「○○のとき」や「××の場面」など、思い浮かべることは人それぞれだと思いますが、実は緊張の裏側には共通点があります。それは「変化」です。
私たちは、それがたとえ良い変化でも、いつもとは違う状態が発生すると緊張してしまうのです。

例えば、環境の変化が多い春。学校なら進級・進学のシーズンですし、社会人では異動も多い時期で、周りの人が変わったり、仕事の内容が変わったりと大きな節目を迎えることの多い季節です。
こんなときに、私たちは新しい環境に対応しようとがんばりがちです。

どのようなものであれ、変化はそれ自体が私たちにストレスを与えるのです。 そして、この「がんばり」に心身のエネルギーを使ってしまうので、今までよりも緊張してイライラしたり疲れたりすることが多くなります。

こうした緊張をするシーンを思い浮かべると、汗を連想しませんか?
緊張しているシーンでは、いつもよりも余計に汗をかいている気がする……。
そんな方は少なくないのではないかと思います。
緊張と汗には何か関連性があるのでしょうか。今回は緊張と発汗の関係をお伝えしていきます。

1汗は緊張からやってくる?

今から上司に重要な報告をしなければならない。
大切な会議で発表役を任されてしまった。
意中の人との初デート。

こんなシーンでは、普段よりも神経が高ぶって緊張しがち。
その時に体の中では、自律神経のうちの交感神経が活発に働いているのです。

自律神経は、体温を保ったり、血圧を維持したり、心臓を動かすなど、さまざまな体の機能を自動的にコントロールして、私たちが意識しなくても生命活動を維持できるようにしています。
自律神経は交感神経と副交感神経に分かれており、そのうちの交感神経が発汗に関係しています。
緊張すると交感神経が活発になり、そのために汗が出やすくなるのです。これを精神性発汗といいます。

2自律神経が乱れると、
いやなニオイの汗が出る?

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現代社会はストレスでいっぱいと言われています。
みなさんは、ストレスというとどのようなものを想像しますか? 仕事や人間関係がうまくいかない時や、満員電車での通勤など、挙げだしたらキリがないくらい思いつくという方もいらっしゃるかもしれません。

このストレス、全くなくなればよいように思いがちですが、実はそうであありません。
適度なストレスはむしろ私たちの生産性を高め、生きていくために必要不可欠なものだと言われています。
問題なのは、過度なストレスです。過度なストレスを受け続けると、自律神経はバランスを崩してしまい、活動的な時に優位な交感神経と休養時に優位な副交感神経のスイッチがうまくいかなくなります。すると、リラックスすべき時にも交感神経が常に優位な状態になってしまいます。
そして、交感神経は発汗を促すため、発汗しやすくなってしまうのです。

さらに、この状況を改善せずストレスを受け続けることによって、交感神経はますます刺激を受けてしまうので、ちょっとした緊張や不安などを受けるだけでも過剰にストレス反応を示してしまい、発汗しやすくなります。

このように、自律神経と発汗には深い関係があるのですが、さらに私たちを悩ませるのは汗のニオイです。
ストレスを受けたときに出る汗は、普段の汗よりもべたべたしている気がしませんか?
緊張が高まっている時の汗がべたべたしているのは、汗の中にミネラルなどの成分が含まれた状態で外に出てしまっているから。
通常なら、ミネラル分などの成分は汗腺で吸収されて体の中に戻り、水分がほとんどの汗が外へ出て行きます。ところが緊張により、急に大量の汗をかいた場合には、汗腺での成分吸収が追いつかなくなります。このためミネラル分が多く含まれた汗が出ます。
ミネラル分などの成分が多い汗は蒸発しにくいので、べたべたする上、皮膚の表面に残り、イヤなニオイを出すようになります。
そんなわけで、緊張などストレスを感じたときに出る汗はイヤなニオイがするのです。

3汗を止める救世主は副交感神経

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交感神経が優位になると汗を促進するのであれば、副交感神経を働かせて自律神経のバランスを整えることで汗を抑えることができるのでは?と思われる方もいるかと思います。

まさしく、その通り。
副交感神経をうまく働かせることができれば、自律神経のバランスが整い、緊張による汗が出づらくなります。
副交感神経が優位になるのはリラックスしているときなので、リラックスできる時間を意識的に持つことが大切です。
私たちがリラックスして、副交感神経が優位になっている時間といえば、睡眠時間やバスタイム。
睡眠環境を整えるとともに、バスタイムを工夫することが効果的です。お風呂に入る時間と温度に気を配ってみましょう。
お風呂に入る時間は、「食後1時間後以上」かつ「寝る1時間くらい前」が体にも負担がかからず副交感神経を優位にさせて安眠するのに理想的です。
お湯の温度は熱すぎると交感神経を刺激してしまうので、38~40度くらいのややぬるめのお湯につかることをおすすめします。
また、長時間お湯につかっていれば良いというものでもありません。無理をせず、自分が気持ちいいと感じる程度の時間、湯船につかりましょう。2、3回に分けてお湯につかるのもいいですね。
そして、ゆったりした気持ちでお風呂から出て、リラックスした状態でベッドでの睡眠につなげましょう。

4汗が汗を呼ぶ?
汗の気にしすぎに注意

緊張して汗をかくと、焦ってしまいさらに汗が出てくるというの経験をしたことはないですか?
特に脇汗は、洋服に染みて目立ってしまうこともあるので、「もしかしたら汗染みができているかも……大丈夫かしら?」と気になってしまい、目の前の大切なことに集中できなくなってしまうこともありますよね。
さらに、それが元で緊張が増加して、また汗が出るという負のスパイラルに陥ってしまうこともあります。
しかし一般に、自分が気にしているほど、周りはあなたの汗をそこまで見ていないものです。
そう考えると気持ちが楽になりませんか?
汗が出てきても、「自分で思っているほど周りの人は気にしてない!」と頭の中で思い返して、あまり気にしすぎずにいることが大切です。

5緊張したときの脇汗対処法

気にしすぎないことが大事とはいうものの、緊張したときの脇汗はどうしても気になってしまいますよね。
それならば何か対策を講じたいもの。
まずは、緊張を抑えることが大切なので、深呼吸をして心を落ち着かせましょう。緊張による汗は、気持ちを落ち着けることで抑えられていきます。
そして、時間があれば化粧室などで汗をぬぐっておくことも効果的です。
このときに汗拭きシートを持っていると、汗やべたつき、ニオイの元がしっかり拭き取れて、ひんやりした清涼感もあるので、より快適になるでしょう。

6緊張があらかじめ
予想されるときはコレ

暑くて汗がたくさん出そうな日や、「今日は大事なプレゼンがある」など、あらかじめ緊張することが予想されるような日には、お出かけ前から脇汗対策ができます。

まずは朝、家を出る前にシャワーと制汗デオドラント剤でシャキッと汗とニオイの予防をしてみましょう。

さらに心配なときには、カーディガンやジャケットなど重ね着できる洋服を選んでおくと、ブラウスやシャツなどに汗が染みてしまった場合にも安心です。

7緊張で汗が止まらない!
そんなときのツボ押し対処法

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汗対策はバッチリしたはず。でも、やはり緊張をすると汗がたらたら……。
そんなときにはツボ押しを試してみましょう。
手のひらには汗を止めるツボがいくつかあるので、こっそり押せば汗止めに役立ちますよ。

有名なツボは4つです。


労宮(ろうきゅう)
手を握ったときに、手のひらに中指の先があたるところにあります。深呼吸しながら、5秒押して5秒離すのを繰り返すと効果的。気持ちを落ち着かせる効果があり、交感神経の活動を和らげます。

後谿(こけい)
手を握ったとき、小指の付け根あたりにできるモコッと飛び出ている部分。手相でいう、感情線がはじまるところあたりです。強めに押すことで、体の熱を静めて、汗を抑える効果が期待できます。

陰郄(いんげき)
手のひらを上に向けたときに、手首の小指側の付け根から1センチ程度下のあたりにあります。このツボも体の熱を収め、緊張したときの汗を抑えてくれます。

合谷(ごうこく)
親指と人差し指の骨が交わる場所から、少し人差し指寄りにあるくぼみです。このツボは体内の水分量と、体の熱を調節していく効果があります。

それぞれの場所を覚えておいて、いざとなったときに押してみてくださいね!

8大量にかく汗、汗っかきではなく
病気の可能性も……

緊張やストレスと発汗の関係は、ここまでにご説明したとおりです。
しかし、大量の汗はもしかしたら体に問題が潜んでいる可能性も。あまりに汗が出る場合は、多汗症という病気の疑いもあります。

激しい運動をしたり、暑い中にいたりするなど、汗をかくような理由があるなら良いのですが、理由もないのに大量の汗をかいてしまう多汗症。
これは温度調節のために汗をかくという、本来の発汗のメカニズムが正常に働いていないために起こります。

一方で、大量に汗をかく人でも、汗をかく理由があってかいている場合は多汗症ではないかもしれません。
ただ、多汗症かそうでないかは、専門医でないとなかなか見分けがつきにくいので、気になった方は専門医に相談をされてみてはいかがでしょうか。

9生活習慣の乱れが汗を引き起こす?

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みなさんは、生活習慣に自信がありますか?
ある!と即答できる方はなかなかいないのではないかと思います。

友人や恋人とのディナーや飲み会で食べすぎ・飲みすぎ、休日には至福のゴロゴロタイム、忙しすぎて運動不足、などどれもありがちなことです。
しかし、こうした生活習慣の乱れた状態が続くと、汗にも影響してしまうのです。

汗が自律神経と深い関係にあることは、ここまでにもお伝えしてきました。
自律神経のバランスを整えることが正常な発汗につながるのですが、この自律神経は生活習慣の影響も受けやすく、生活習慣が乱れると自律神経もバランスを崩しやすくなってしまいます。

睡眠をしっかり取ることや、食事の栄養バランスを考えること、適度な運動を心がけることなど、生活習慣にも意識を向けて改善していくことが、汗をコントロールすることにもつながります。

11まとめ

緊張と汗の関係、いかがでしたか?
私たちの生活と緊張やイライラなどのストレスはなかなか切り離すのが難しいもの。
ときには、自分では気がついていないうちに、実は緊張していてストレスの元になっていることもあります。

自分の心に目を向けてみると、充電と同じようにエネルギーでいっぱいの時と、少しエネルギーが不足している時がありませんか?
リラックスをしていたり、何か楽しいことをしたりすると、その分、心にエネルギーが入ります。
逆に、ストレスがかかるとエネルギーが消費されてしまいます。
冒頭でも紹介しましたが、緊張やストレスのきっかけは「変化」です。
変化によって受けたストレスの度合いが高くなればなるほど、心のエネルギーは消費されてしまいます。
心に入ってくるエネルギーと、消費されるエネルギーのバランスを考えてみてください。
入ってくる量に対して、消費ばかりが進んでいたらどのような状態になりますか?
どんどん心が消耗してしまいます。

自分にとって「良くない」と分かりやすい変化は実感できますが、良い変化はそれによってエネルギーが消費されているのに気がつきにくくなります。
その結果、自分でも知らず知らずのうちに、心のエネルギーを消費してしまって緊張・イライラの状態が深刻化することが多いのです。

ストレスが高まった状態や、生活習慣が乱れた状態が続くことによって、自律神経はバランスを崩してしまいます。そして、副交感神経の働きが弱まり、逆に交感神経の活動が優位になって、発汗を促すようになります。

目の前の汗への対策はもちろんですが、生活習慣やご自身の心にも向き合ってみて、汗の悩みを軽減していきましょう。

  • 五味常明ドクター 写真

    PROFILE

    監修者:医学博士 
    五味常明先生

    昭和大学形成外科等で形成外科学、および多摩病院精神科等で精神医学を専攻。患者の心のケアを基本にしながら外科的手法を組み合わせる「心療外科」を新しい医学分野として提唱。ワキガ・体臭・多汗治療の現場で実践。わきがの治療法として、患者が手術結果を確認できる「直視下剥離法(五味法)」を確立。TVや雑誌でも活躍中。流通経済大学スポーツ健康学部、客員教授。